おされたまへり 圧されたまへり おされたまえり 圧されたまえり 01-170
政治のバランスが東宮を擁する弘徽殿の女御や父の右大臣側から左大臣側に移ってゆくことを意味する。そこからまた右大臣側の逆襲が始まり、光源氏は須磨へと逃れることになる。政治バランスは源氏物語の大きな構造のひとつである。
この大臣の御おぼえ いとやむごとなきに 母宮内裏の一つ后腹になむおはしければ いづ方につけてもいとはなやかなるに この君さへかくおはし添ひぬれば 春宮の御祖父にて つひに世の中を知りたまふべき右大臣の御勢ひは ものにもあらず圧されたまへり
この大臣への帝のご信任はとても篤いうえに、姫の母宮は帝と同母の生まれでいらっしゃったので、両親いずれをとっても大変なご威光なのに、この君までこのようにお越しになって縁づかれたからには、東宮の御祖父でいずれ天下を掌握なさる右大臣のご権勢も、元来不動のはずが圧されることともなった。