だうりをもうしなはせたまひ 道理をも失はせたまひ どうりをもうしなわせたまい 道理をも失わせたまい 01-105
具体的には弘徽殿の女御より桐壺更衣を大切にしてきたことや、さして身分の高くない更衣が一人亡くなっただけなのに尋常でない悲しみにくれている様子が理解できない。
さるべき契りこそはおはしましけめ そこらの人の誹り恨みをも憚らせたまはず この御ことに触れたることをば道理をも失はせたまひ 今はたかく世の中のことをも思ほし捨てたるやうになりゆくは いとたいだいしきわざなりと 人の朝廷の例まで引き出で ささめき嘆きけり
(側仕えから離れると)こうなる因縁が前世にあったのだろうが、周囲の誹り恨みも遠慮なさらず、あの方のこととなると見境もなくし、今ではもうこんな風に国政への関心まで投げ出しておしまいでは、どんな災いを招くことやらと、異国の朝廷の例まで引き合いにしてひそめき嘆くのです。