かかるようもやとのこしたまへりける かかる用もやと残したまへりける かかるようもやとのこしたまえりける かかる用もやと残したまえりける かかるようもやとのこし給へりける かかる用もやと残し給えりける 01-078

2021-04-13

帝の歌「尋ねゆく幻もがな/01-091」を引き出すための伏線にしては、練られていない感じがしなくもないが、母からすれば帝の気持ちを引き留めることこそが、家を再興するためにも、孫(光源氏)の将来にとっても一番大切なことである。本来であれば娘の供養のために、寺に寄進したり処理を任せてしまう遺物を、形見の品として帝に献上することは当時の死生観からすれば、特異であったかも知れない(宮中は死を忌み嫌う場所であることを想起しよう)。そうであれば、あっさりした表現の中にも、複雑な人間関係がからみあった含みの多い表現で、読み応えがあるといえよう。


をかしき御贈り物などあるべき折にもあらねば ただかの御形見にとて かかる用もやと残したまへりける御装束一領 御髪上げの調度めく物 添へたまふ

風情のある贈り物などすべき折りでもないので、ただ更衣を偲んでいただく御形見にと、こうした用もあろうかと残しておかれた御衣装一揃えと御髪上げの調度類を、歌に添えてお出しになる。

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