なかなかなる なかなかなり 中々なる 中々なり 01-070
中途半端でやるのではなかったとの後悔。ただし、母宮が本心から宮仕えに反対であったかどうかは疑問であり、宮仕えに出した以上は、帝の寵愛を受けることを期待したはずである。今も光の君の存在のみが未来の希望である。
はかばかしう後見思ふ人もなき交じらひは なかなかなるべきことと思ひたまへながら ただかの遺言を違へじ とばかりに出だし立てはべりしを 身に余るまでの御心ざしのよろづにかたじけなきに 人げなき恥を隠しつつ交じらひたまふめりつるを 人の嫉み深く積もり 安からぬこと多くなり添ひはべりつるに 横様なるやうにてつひにかくなりはべりぬれば かへりてはつらくなむかしこき御心ざしを思ひたまへられはべる
しっかりと後ろ盾する人もない宮中の人まじらいは、かえってあだにもなろうとは存じながら、ただかの遺言に違うまいその一心で、宮中へ出立させましたところ、身に余るまでのご寵愛が万時にもったいなくて、それがために人並にも扱われぬ恥を忍んで宮仕えを続けておられたようですが、人のそねみは重なり積もり、心痛はそれに応じて増すばかりで、尋常ならざる仕業でついにこんなことになってしまわれたうえは、恐れ多いことながらかえってつらくご寵愛が思われてなりません。