つとそひて つとそいて つと添ひて つと添いて つと添ふ 01-052

2021-04-13

桐壺更衣の気配や容貌が幻影のような月の輪郭にぴったりと重なって。「つと」は動かずに重なりあう。「添ひ」ハ行四段活用だから自動詞。他動詞なら下二段活用。


かうやうの折は 御遊びなどせさせたまひしに 心ことなる物の音を掻き鳴らし はかなく聞こえ出づる言の葉も 人よりはことなりしけはひ容貌の面影につと添ひて思さるるにも 闇の現にはなほ劣りけり

このような折には管弦の遊びなどを催しになられましたもので、あの方は人より豊かな感情を込めて琴を爪弾し、はかなく消えてしまったその時歌った愛の言葉にしても、人とは異なる色香漂うお顔立ちが幻のように月の面と重なるのを御覧になるにつけても、歌にある闇中の逢瀬よりも更に実在感に乏しいものでした。

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