のたまひつれど のたまいつれど 宣ひつれど 宣いつれど 01-039

2021-04-13

この発言は斎場に着く前になされた発言。実際に「いかめしうその作法したる」を眼前にした折りには規模の大きさに肝を冷やしたのだろう。


むなしき御骸を見る見る なほおはするものと思ふがいとかひなければ 灰になりたまはむを見たてまつりて 今は亡き人とひたぶるに思ひなりなむと さかしうのたまひつれど 車よりも落ちぬべうまろびたまへば さは思ひつかしと 人びともてわづらひきこゆ

虚しくなった亡骸(なきがら)をこの目にしながらも、なおも生きていらっしゃるものと思うのは甲斐がないので、灰におなりになるのを見申し上げて、今は帰らぬ人ときっぱり思い切ろうと、心とは裏腹に気丈に挨拶なされたが、牛車より降りる際に転げ落ちそうにされたのを、そんなことだと思っていたと、人々は慰めようがなく持て余すのでした。

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