まかでたまひなむとす まかでたまいなんとす 罷で給ひなむとす 罷で給いなんとす 01-036
三才の光源氏に内裏から退こうという意思がないことは以下につづく文より明らかである。「まかでさせ」の使役があるとわかりよいが、しかしそれでは行為の主体が帝に移るので、「す」ではなく「せたまふ」など尊敬語が入らねばならない。ここは袴着をしたからには行動に責任があるとの認識の現れととっておく。
御子はかくてもいと御覧ぜまほしけれど かかるほどにさぶらひたまふ例 なきことなれば まかでたまひなむとす
御子のことはこんな場合でもご覧になっていたいと強くお望みだが、母の喪中に帝のお側にお仕えする前例はないことなので、宮中を後にすべきということでその運びとなる。