いみじ 忌みじ 01-030
かつての閨で寝物語に口にした「後れ先立たじ」との誓いの言葉が、帝の言葉により深く魂がゆさぶれることで覚醒し、死に態であった更衣は最期の力を振り絞って歌を詠み上げる。言葉が先に合って(この場合は誓いの言葉)、後で事実がついてくるという関係が源氏物語では多様される。この関係を「(言=事)構造」と呼ぶことにする。なおまた、歌は魂を揺すぶられる状況(「魂振り」)があり、励起した魂が言葉に宿って口から発せられるもので、聴く者の魂がそれによって励起させられるために、歌を返さずには魂は鎮まらないのである。
限りあらむ道にも後れ先立たじと 契らせたまひけるを さりともうち捨ててはえ行きやらじ とのたまはするを 女もいといみじと見たてまつりて
宿命で決まった道であっても後れ先立ちはしないとお誓いになったのに。つらくてもまさかうち捨て行っておしまいではないねとおっしゃるのを、女もたまらなくおいたわしいと存じ上げて、