おほとのごもりすぐし おおとのごもりすぐし 大殿籠もり過ぐし おほとのごもりすぐす 大殿籠もり過ぐす 01-011
古代の帝は、夜は神事として、賢所に納めてある三種の神器のひとつの草薙の剣と添い寝をしたことから、後宮で性を営んだ後、夜のうちに部屋に戻って休むのが生活のスタイルであった。現実世界の天皇はおそらくそうしたスタイルを忠実に実行したとは考えにくいが、物語の帝は、すくなくとも物語の最初の天皇として位置するこの帝は、聖天子を理想として描かれていることから、後宮で寝過ごすことは、単に朝の政務を怠ったことを意味するのみならず、帝として破格の行為であった。
おぼえいとやむごとなく上衆めかしけれど わりなくまつはさせたまふあまりに さるべき御遊びの折々何事にもゆゑある事のふしぶしにはまづ参う上らせたまふ ある時には大殿籠もり過ぐしてやがてさぶらはせたまひなど あながちに御前去らずもてなさせたまひしほどに おのづから軽き方にも見えしを
帝からの引きはこれ以上にないほどで女御の風格をお備えでしたのに、帝がむやみと側にお留になるばかりに、立派な管絃の会の折りや格式あるどんな行事にも真っ先にこの方をお召し上げになる、時には共寝したまま起きそびれそのまま側仕えをおさせになるなど、強引にお手元からお放しにならないうちに、おのずと品下る方と見られもしたものですが、