いとまばゆきひとのおほむおぼえ いとまばゆき人の御おぼえ いとまばゆき人の御覚え 01-005

2021-04-13

「人」は桐壺更衣。更衣といわずに一般化した表現。皮肉がこもる。「の」は「御おぼえ」の対象(目的格)。「まばゆき」は「御おぼえ」に係る。「まばゆき」は強い光源に向かって正視できない状態。気おくれ 反感 劣等感などの心理作用をうながす。帝の寵愛に対する皮肉であると同時に光る肌をもつ光の君誕生の前振りとなっている。


上達部上人などもあいなく目を側めつつ いとまばゆき人の御おぼえなり 唐土にもかかる事の起こりにこそ世も乱れ悪しかりけれ と やうやう天の下にもあぢきなう人のもてなやみぐさになりて 楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに いとはしたなきこと多かれど かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて まじらひたまふ

上達部や殿上人なども対処に困り目をそむける一方で、まったく見も当てられないご寵愛ぶりですな。唐土でもこうしたことが原因となって、世も乱れ災厄を招くものですと、ようやく広く世間でも、道を外れた扱いに窮する悩みの種となり、果ては楊貴妃の名前までが持ち出されかねない事態へと進むなか、更衣はひどくいたたまれない思いを幾度となく味わうものの、かたじけない帝の比類のなき大御心を頼みに、宮仕えをお続けになるのでした。

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