あはせ あわせ あはす 合はす 合わす 02-117
これにかけて歌を詠めという申し入れ「営み」に加え、歌を「詠み出たる」こと。辛い目に合わせるの意味ではない。先ず根や菊の露だけ贈られてくる。歌を詠めという女の意図はわかるが、多忙で歌を考える暇がない。そのうち、わたしはこんな風に思いましたと根や菊の露に題して歌をよみかけてくる。そうなればますます返歌をしないではすまなくなる。この「あはせ」は加えて、その上の意味。
さるべき節会など 五月の節に急ぎ参る朝 何のあやめも思ひしづめられぬに えならぬ根を引きかけ 九日の宴に まづ難き詩の心を思ひめぐらして暇なき折に 菊の露をかこち寄せなどやうの つきなき営みにあはせ さならでもおのづから げに後に思へばをかしくもあはれにもあべかりけることの その折につきなく 目にとまらぬなどを 推し量らず 詠み出でたる なかなか心後れて見ゆ
大事な節会など、端午の節会に急いで参内する朝なんの分別もわからぬほど心しずめられずにいるのに、立派な菖蒲の根を寄越し歌を詠めと言ってきたり、重陽の節会に何はさておき難韻の作詩に思いを巡らせゆとりがない時に、不老長寿を願う菊の露にこと寄せ歌を詠めなどといった手も出せない申し入れに加え、言われなくても後から思えばおのずとたしかに興味もそそり愛情もますような事柄ではあれその時の状況には不似合いでつい見落としてしまったことなどを斟酌せずに、詠みかけてくるのは、気転が利くようでかえって思慮を欠いてみえるものです。