おぼしわづらふ 思しわづらふ 思し煩ふ おぼしわずらう 思しわずらう 思し煩う 01-153
思い悩む。すぐ後に、「この君に奉らむの御心なりけり」と説明される。娘の結婚相手として、東宮よりも光源氏を選んだ根拠はなんだろう。帝の外祖父になることこそが公卿にとって最大の願いであるはずなのに。ひとつには、東宮が対立勢力である右大臣を外祖父にもつので、仮に娘に東宮の子が生まれても、東宮が帝位にいる間は、右大臣方を栄えさせる結果となる。今ひとつの理由としては、「ものの心知りたまふ人は、『かかる人も世に出でおはするものなりけり』と、あさましきまで目をおどろかしたまふ(ものの本質を見抜いておられるお方は、「こんな方も世に生れて来られるものか」と、常軌を超えた相に信じがたいと目を瞠はっておられました)」とあった。右大臣は光の君の人相に、常識でははかれない将来を感じ取り、この人にかけようとの選択をしたものと思われる。
引入の大臣の皇女腹に ただ一人かしづきたまふ御女 春宮よりも御けしきあるを 思しわづらふことありける この君に奉らむの御心なりけり
引入れの大臣には皇女との間にただ一人慈しんでおられる愛娘がいて、東宮からもご所望がありながら応諾もならず悩んでおられたのは、この君に差し上げようとの思惑があおりだったのです。