きこえまほしげなること 聞こえまほしげなること 聞こえまほしげなる事 01-032
二つの解釈が可能である。
「息の絶えつつ」の前で文を切る場合(女から母に戻る解釈):光の君の後見をくれぐれもお願いすること。
「息の絶えつつ」の前で切らない場合:(女のままの意識):お約束を守れず申し訳ございませんという帝への別れの挨拶。
しかし、「いとかく思ひたまへましかば、と」を意味的に下にかけることには無理があるので、前の解釈の方が落ち着くように思う。
息も絶えつつ 聞こえまほしげなることはありげなれど いと苦しげにたゆげなれば かくながらともかくもならむを 御覧じはてむと思し召すに 今日始むべき祈りども さるべき人びとうけたまはれる 今宵よりと 聞こえ急がせば わりなく思ほしながら まかでさせたまふ
息も絶え絶えに、申し上げておきたいことがおありの様子ながら、どうにも苦しげで辛そうなので、このままどうなれ結果を見届けようと、帝は決心なさるが、今日始めねばなりませぬご祈祷など、例の立派な験者たちが承っております、今宵にもと側女がせき立て申し上げるので、気持ちの納めようもないご心痛ながら、退出をお許しになったのです。