にほひやかに にほいやかに 匂ひやかに 匂いやかに にほひやかなり においやかなり 匂ひやかなり 匂いやかなり 01-028
丹色がくっきりと浮き出るのが原義。香りがほのぼのと立ち上る意味にも転じる。発散する美で、光源氏、薰の君に受け継がれてゆく性質。
いとにほひやかにうつくしげなる人の いたう面痩せて いとあはれとものを思ひしみながら 言に出でても聞こえやらず あるかなきかに消え入りつつものしたまふを 御覧ずるに 来し方行く末思し召されず よろづのことを泣く泣く契りのたまはすれど 御いらへもえ聞こえたまはず まみなどもいとたゆげにて いとどなよなよと我かの気色にて臥したれば いかさまにと思し召しまどはる
とても艶やかでかわいらしいお方が、ひどく面やせて、ああつらいと運命をしみじみ感じながらも、言葉に出して申し上げることもできず、生死もつかず消え入りそうにしていらっしゃるご様子をご覧になるにつけ、後先のわきまえもなく、どんな誓いをも涙ながらにお立てになるのでしたが、更衣はお返事を申し上げることもできず、目もとなども大層だるそうで、益々なよなよとして気を失いその場に崩れてしまわれたので、帝はどうなってしまわれるのだろうと御心を取り乱しておしまいでした。