ごらんじだにおくらぬ 御覧じだに送らぬ ごらんじだにおくらず 御覧じだに送らず 01-027
見送りさえしないと解釈されるが、今まさに見送りしているのである。帝自ら更衣の里まで見送るはずもない。病状がどうなるか見届けること。この時点では、帝は病状が重いことは気づきながらも、まだ死を正面からは受け止めようとしていない。更衣への愛情が死を脳裏から締め出し、回復をのみ願っている。更衣の死が心を占めはじめるのは、「いかさまにと思し召し」た時であろう。このあたり、運命を悟った更衣と、運命に気づかない帝とのギャップがドラマを生んでいる。決まりだから別れたというだけなら、ドラマ性は大きく減じるであろう。
限りあれば さのみもえ留めさせたまはず 御覧じだに送らぬおぼつかなさを 言ふ方なく思ほさる
決まりがあることなので、そう留め置くこともおできになれず、帝は病状を見届けてやれないもどかしさを言葉にできぬほどつらくお悔やみにでした。