めだう めどう 馬道 01-018
殿舎の中央を貫く板敷きの廊下で、その両端には戸があるのが普通。行くことも戻ることもできないように通せんぼして、帝のもとに行かせない直接行動をしたという意味。これも難産や死産を狙った呪詛であろう。馬道は女道と音が通じる。妊娠分娩を阻害し、難産のすえ母子ともに危うくさせる呪いが込められている。単なる通せんぼでは児戯に等しい。藤壺の出産時でさえ、「弘徽殿などのうけはしげにのたまふ(弘徽殿めが神仏に願って呪っている)」と聞いて、ここで死んでは物笑いになるのと気力をふりしぼって出産にこぎつける。光源氏の正妻である葵の上は、賀茂祭での車争いから物の怪に襲われ、難産の末、出産間もなく亡くなってしまう。これらよりずっと格下の桐壺に対する憎悪や呪いは、葵の上や藤壺に対する恨みの比ではなかったのではないか。
またある時には え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ こなたかなた心を合はせて はしたなめわづらはせたまふ時も多かり
またある時には、御前へ上がる際避けては通れない馬道の戸を、両側から締め立て、あちらとこちらで示し合せて立ち往生させることも度々でした。