うちたのめる うち頼める たのむ 頼む 02-108

2021-06-04

「うち」はすっかりの意味と、とっさにすこしばかりの意味がある。後に「頼めわたる」とあるので、すっかりではない。「頼む」はマ行四段活用の自動詞用法(こちらが相手を頼りとする)、マ行下二段活用の他動詞用法(相手がこちらを頼りとするようにさせる、使役用法)がある。ここは他動詞で、常夏が頭中将を頼りにするようにしむけることに少しは成功したとの意味。


さばかりになれば うち頼めるけしきも見えき 頼むにつけては 恨めしと思ふこともあらむと 心ながらおぼゆるをりをりもはべりしを 見知らぬやうにて 久しきとだえをも かうたまさかなる人とも思ひたらず ただ朝夕にもてつけたらむありさまに見えて 心苦しかりしかば 頼めわたることなどもありきかし

それほどの仲になってみますと、少しは夫としての信用を勝ち得たようにも見えました。頼むとなれば恨めしいと思うこともあろうと一人推量される折々もあったのですが、気にも留めておらぬふうで、久しく通いが途絶えてもこんなにも足が遠いかとなじる様子もなく、ただ朝夕の仕度に専念しようとしている様子が見て取れいじらしく思われたので、いつまでも頼りにするよう幾度となく言って聞かせたりなどもしました。

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