にはのもみぢこそふみわけたるあともなけれ 庭の紅葉こそ踏み分けたる跡もなけれ にわのもみじこそふみわけたるあともなけれ 02-105
女が人待ちをしていて、通ってくる男がいないのをからかうと解釈されている。しかし、この解釈では「こそ……已然形」にした意味がなくなる。庭の紅葉こそは踏み分けられていないが、○○は踏み分けられた跡がありますねとの意味。もちろん、あなたの妻の体は私(上人)によって踏み分けられていて、その証拠もあるんだと、左馬頭に聞かせているのである。誰も通って来ないでは、左馬頭を「ねたます」ことにならない。ここで左馬頭は夫から、寝取られた男に突き落とされる。上人は左馬頭に対しては勝利宣言をし、女に対しては征服宣言したのである。
男いたくめでて 簾のもとに歩み来て 庭の紅葉こそ 踏み分けたる跡もなけれなどねたます
男はたいそう感心して簾近くに歩み寄り、「庭の紅葉こそ男の通った跡もないがあなたどうかな」などと嫉妬心を掻きたてる。