ささがにのふるまひしるき ささがにのふるまいしるき しるし 著し 02-115
「わが背子が来べき宵なりささがにの蜘蛛のふるまひかねてしるしも」を下に敷く。「ささがに」は蜘蛛を指す雅語。朝、女の家の軒に蜘蛛が巣を張ると、その夕方は久しく来ない夫が訪ねてくる予兆とされた。「しるき」ははっきりと見て取れる。見誤りようがない事実だ。
ささがにのふるまひしるき夕暮れに ひるま過ぐせといふがあやなさ いかなることつけぞやと 言ひも果てず走り出ではべりぬるに 追ひて
蜘蛛が巣作りするそのふるまい方で私がまた来ることはすでにわかっているはずの夕暮れだというのに、蒜(ヒル)のにおいが消えるまで昼間を待ち過ごせと言うとは理屈にあわぬではないか。においが消えたらなどと遭いたくない口実をよく言えたものだ」と言いも終わらぬうちに走り出ましたところ、すぐ後を追って、