あはれはかけよなでしこのつゆ あはれはかけよ撫子の露 あわれはかけよなでしこのつゆ あわれはかけよ撫子の露 02-110
「あはれ」は愛情。「撫子」は「撫でし子」、すなわち、花の名前と、頭中将が撫でてかわいがった子供のことをかける。「露」は「かける」対照である愛情の露と解釈される向きもあるが、歌で「露」とあれば泣き濡れること。あなたが撫でてかわいがってくれないから、撫子が泣き濡れ露にまみれていますという意味。「撫子の露にまみえし」などの省略で、そう考えると歌というより今様に近似し、やはり遊び女、傀儡師など回遊性の娼婦めく。なお露の多さは、「荒れたる家の露しげき/02-143」と具体的に描写される。
山がつの垣ほ荒るとも折々にあはれはかけよ撫子の露
山がつの垣は手つかず荒れるとも、折りあるごとに愛情をそそいでくださいな、あなたが撫でてかわいがってくださらないから、撫子は露にまみれて泣きじゃくっていますよ