かどなきにはあらねど 才なきにはあらねど 02-106
才能。「その片かどもなき人はあらむや/02-023」という光源氏の質問があり、左馬頭はこの質問は直接聞いていないが、結果としてその答えになっている。
女いたう声つくろひて 木枯に吹きあはすめる笛の音を ひきとどむべき言の葉ぞなき となまめき交はすに 憎くなるをも知らで また 箏の琴を盤渉調に調べて 今めかしく掻い弾きたる爪音 かどなきにはあらねど まばゆき心地なむしはべりし
女もひどく声を作って、人目も木の葉も枯らしてしまう木枯らしに、合わせてお吹きになっているようなはげしい笛の音を、ひいてとめさせる琴も言葉も持ち合わせておりませんわと、悩ましい歌を詠みかわすので、聞いてるこちらが業を煮やすのも知らず、お次はまた筝の琴を華やかな盤渉調で奏でるのですが、今風に弾く爪音は才気を感じなくもなかったのですが、居たたまれない思いでした。