ことのは 言の葉 02-106

2021-06-03

「琴」と「言葉」をかける。なお、木枯が吹けば、男の通ったあとが庭に残っていよういまいが、落ち葉が舞い散り、跡は消えてしまうのだから、この点、女は男の和歌だけでなく、「庭の紅葉こそ」の発言にも答えたことになる。


女いたう声つくろひて 木枯に吹きあはすめる笛の音を ひきとどむべき言の葉ぞなき となまめき交はすに 憎くなるをも知らで また 箏の琴を盤渉調に調べて 今めかしく掻い弾きたる爪音 かどなきにはあらねど まばゆき心地なむしはべりし

女もひどく声を作って、人目も木の葉も枯らしてしまう木枯らしに、合わせてお吹きになっているようなはげしい笛の音を、ひいてとめさせる琴も言葉も持ち合わせておりませんわと、悩ましい歌を詠みかわすので、聞いてるこちらが業を煮やすのも知らず、お次はまた筝の琴を華やかな盤渉調で奏でるのですが、今風に弾く爪音は才気を感じなくもなかったのですが、居たたまれない思いでした。

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