うるさし 煩し 02-101
ダブルミーニング。嫉妬心に対してはうるさい。染色や織りの技に対しては立派な。締めの言葉であり、係結びで「うるさし」が強調されている。通常の解釈のように、立派なだけであったら、左馬頭も別れを盾に一芝居打ったりしない。「あまりいと許しなく疑ひはべりしもうるさくて/02-096」
ひとへにうち頼みたらむ方は さばかりにてありぬべくなむ思ひたまへ出でらるる はかなきあだ事をもまことの大事をも 言ひあはせたるにかひなからず 龍田姫と言はむにもつきなからず 織女の手にも劣るまじく その方も具して うるさくなむはべりし とて いとあはれと思ひ出でたり
ひたすら信をおこうと思う伴侶としては、こんな風であってほしいとこの女のことがつい思い出されたのです。ちょっとした私的なことでもまことの大事でも相談すればしがいがあり、着物を染め上げる腕前は竜田姫といってもおかしくないし、仕立ての腕はたなばた姫の手にも劣らないくらいであってほしいけれど、ただ例の性格も備わって全くご立派でした」と言って、左馬頭はひどく愛しそうに思い出すのでした。