はべりしに 侍りしに 02-099
「に」は逆接。この状況でもまだ自分の勝手な解釈を許すところが左馬頭の身勝手さであろう。
艶なる歌も詠まず 気色ばめる消息もせで いとひたや籠もりに情けなかりしかば あへなき心地して さがなく許しなかりしも 我を疎みねと思ふ方の心やありけむと さしも見たまへざりしことなれど 心やましきままに思ひはべりしに
こちらの気を引く思わせぶりな恋歌も詠まず心のままに恨みを綴った手紙も残さず、まったく取り付く島のない愛情のなさには、やるかたない思いがして、あんなに口やかましく情け容赦がなかったのも自分を捨ててほしいとの本心からだったのかと、そんなふうに考えたことはこれまでなかったことながら、腹立ちまぎれに疑ってかかったものですが、