けしきばめる 気色ばめる けしきばむ 気色ばむ 02-089
気取ってと解釈されているが、思うにまかせての意味。木の道や絵所の例では、「心にまかせて作り出だす/02-086」や「心にまかせてひときは目驚かして/02-088」に当たる。この部分は気取るでも通るので、風流気の多い木枯らしの女と結びつけて解釈されてきた。しかし、/02-090で考察する通り「気色ばむ」はもともとある本心が外に現れること(馬脚を現すこと)であって、本心を見えなくさせる「気取るなど」とはおよそ正反対の意味である。指をくう女が「気色ばめる」例である。嫉妬心が外に現れて口さがなく、怒りにまかせるのが気色ばめるである。
手を書きたるにも 深きことはなくて ここかしこの点長に走り書き そこはかとなく気色ばめるは うち見るにかどかどしく気色だちたれど なほまことの筋をこまやかに書き得たるは うはべの筆消えて見ゆれど 今ひとたびとり並べて見れば なほ実になむよりける
(左馬頭)字を書いた場合でも、深い意図などなくて、あちこちの点を書き流しどことなく気分を出している書は、ぱっと見には才気走り雰囲気があるようだけれど、やはりまことの筆法通りに細心の注意を払って書きえた書は、見た目のうまさこそ目につかないが、今一度とり並べて見るとやはり誠実な書に心は惹かれるのです。