あふさきるさにて あうさきるさにて おうさきるさにて 02-052
あちらがよけらば、こちらが悪く
とあればかかりあふさきるさにて なのめにさてもありぬべき人の少なきを 好き好きしき心のすさびにて 人のありさまをあまた見合はせむの好みならねど ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに 同じくはわが力入りをし直しひきつくろふべき所なく 心にかなふやうにもやと 選りそめつる人の定まりがたきなるべし
(頭中将)こちらがよくても向こうがだめという具合に思いにまかせぬもので、不充分ながらそのままでこと足りる人が少ないのが原因であって、浮ついた気持ちで面白半分に、女の生態を数多く見比げようとの趣味からではないのだけれど、ひたすら生涯の伴侶を決定せねばと思いつめるばかりに、どうせならわざわざこちらが骨折りして直し改めねばならないところなどなく、意にかなう風であればと、選んでかかる人は決まりにくくなってしまうものなのです。