さてありぬべきかたをば ありぬべし 02-022
「そのままであってよい方面を」すなわち、「そのまま伝えればよいのにそれを」との意味である。
見る人 後れたる方をば言ひ隠し さてありぬべき方をばつくろひて まねび出だすに それしかあらじと そらにいかがは推し量り思ひくたさむ まことかと見もてゆくに 見劣りせぬやうはなくなむあるべきと うめきたる気色も恥づかしげなれば
(頭中将)後見人は見劣りする方面を隠して言わず、ありのままでよい面も聞こえよく伝えるものだから、そんな立派なはずはあるまいと見もせぬうちにどうして当て推量で正体を見抜きけましょうか。本当だろうかと一緒に暮らしてゆくうちに、がっかりせずにすむなんてことはあるべくもないのにと、大袈裟に嘆息する表情もいかにも誇らしげなので、