こころづくし 心尽くし 02-004
藤壺への倫ならぬ恋情に精神をすっかりすりへらしてしまうこと。
忍ぶの乱れやと 疑ひきこゆることもありしかど さしもあだめき目馴れたるうちつけの好き好きしさなどは 好ましからぬ御本性にて まれには あながちに引き違へ心尽くしなることを 御心に思しとどむる癖なむあやにくにて さるまじき御振る舞ひもうち混じりける
人目を忍んで通う女がどこぞにおいでかと大臣家では疑い申し上げることもあったけれど、そのような実のない世間でいくらも目にする軽はずみな色事などはお好みにならないご気性であって、稀には、強いてご気性に反して心を磨り減らす恋を御心に思いつづけるご性癖があいにくおありで、あってはならぬお振る舞いもついうち混じるのだった。