なをや 名をや 02-001
「や」は反語。名を流していいだろうか、いやよくない。「や」は「流さむ」の「む」と呼応する。
光る源氏 名のみことことしう 言ひ消たれたまふ咎多かなるに いとど かかる好きごとどもを 末の世にも聞き伝へて 軽びたる名をや流さむと 忍びたまひける隠ろへごとをさへ 語り伝へけむ 人のもの言ひさがなさよ
光源氏とはまあ、名ばかりごたいそうだが、とつい言いよどんでしまう不始末が多いとのことなのに、ますますもって、こんな色恋沙汰の数々を後の世にまで語り継がれて、軽はずみの名を流すことになってはと、お隠しになっておられた秘密までも、語り伝えようとした人の、なんと口さがないことか。