となむ …となむ 01-183

2021-06-11

 「(となむ)いふ」などの省略。「言い伝え」とのことという、二重の間接表現になっていることに注意。「となむ」が受けるのは直接的には「光る君といふ名は…とぞ言ひ伝へたる」だが、形式的には、「いづれの御時にか…ありけり」で始まる桐壺の帖全体を受けるとも考え得る。物語冒頭から七十余年の後、源氏物語の最後を語り終える語り手の年齢がいくつかは計りかねるが、同じ語り手が桐壺の帖で語られるエピソードを直接見聞きしたとは考えられない。「となむ」の一語はそうした間接体験であることの証左である。


光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ

光の君という名は、高麗人が賛嘆申し上げておつけ申しあげたのだと言い伝えられている。

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