さう 01-121

2021-01-11

光源氏の生涯に関わる重要な卜占である。これまでの解釈は、「相」と「見(見立て)」との区別に混乱がある。「相」はあくまで若宮の実際の人相で、「帝王の上なき位にのぼるべき」人相をしているのであって、これは動かせない客観的事実である。しかし、それをどう見立て、結論を出すかは解釈の領域であり、人相見によって異なる。「そなたにて見れば」とは、若宮が人相通りに帝王の道を進んだ場合どういう運命が待ち受けているかを見立てるのである。その見立によれば「乱れ憂ふることやあらむ」が卜占の結果がでる。これはあまりに恐ろしい結果であるので、回避する方法を探る。「天の下を補くる方にて見れば」がそれで、「国政の補佐をするという方面から将来を見立ててみると」の意味だが、しかし占いの結果は「その相違ふべし」と出た、そうした仮定は若宮の人相上ありえないとの結論である。すなわち帝にも臣下にもならないとのことで、高麗人には解決できなかったのである。すでに述べたことだが、光源氏の将来の出世は、人生最大の危機である須磨明石の都落ちを経てなされる。これを救うのは死者である父帝の霊力である。地上の論理を超えた力であり、それは高麗人にも見通せなかったのだ。
さて、これを聞き及んだ帝は、倭相や宿曜の達人たちの占いも同じような内容だったので、「乱れ憂ふること」を避け、一世源氏(皇位継承権はないが、皇族の血が流れている点で藤原氏等の臣下とは同等でもない)になすことを決心した。


国の親となりて 帝王の上なき位に昇るべき相おはします人の そなたにて見れば 乱れ憂ふることやあらむ 朝廷の重鎮となりて 天の下を輔くる方にて見れば またその相違ふべし と言ふ

国の親となって帝王のこの上なき位に昇りつめる相をお持ちでいらっしゃる人ではあるが、その方から見立てると、国が乱れ民が憂うことになるやも知れぬ。かと言って臣下の身で朝廷の重責を担い国政を補佐する方面で見立をしたのでは、これまたお持ちの相と食い違うことになる、と口にする。

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