くれまどふこころのやみもたへがたきかたはしをだにはるくばかりに くれまどうこころのやみもたえがたきかたはしをだにはるくばかりに 暮れまどふ心の闇も堪へがたき片端をだにはるくばかりに 暮れまどう心の闇も堪えがたき片端をだにはるくばかりに 01-067
「母北の方なむいにしへの人のよしあるにて(母は家柄の古い教養豊かなお方で)/01-006」とあり、会話文に歌らしきものを挟み込むのであろう。そういうめんどくさい女官が紫式部の周りにいたのかもしれない。それはともかく、物語内で歌として認識されていないのは、返歌がないことからわかる。「闇に暮れて臥し沈みたまへるほどに、草も高くなり野分にいとど荒れたる心地して、月影ばかりぞ八重葎にも障はらず差し入りたる/01-054」の形象化。更衣の母の生前死後で変わらないのは、母更衣の光源氏に対する愛護。月と更衣の重なりは「人よりはことなりしけはひ容貌の面影につと添ひて思さるる/01-052」にも見える。
暮れまどふ心の闇も堪へがたき 片端をだにはるくばかりに 聞こえまほしうはべるを 私にも心のどかにまかでたまへ
子を失い暮れ惑う心の闇も耐えがたく、この先せめて出口が見えれば気も晴れましょうに。お話がしとう存じますから、私人の身でごゆるりとお越しください。