あやしきわざ 妖しき業 怪しき業 01-017
諸注によると、着物を何かでひっかけて裾を切るとか、糞尿を巻くなどしたとする。しかし、悪質であってもいたずらの域を出ない。狙いは何か。端的に言えば、帝が更衣を抱けない体にすること、子を宿しているなら流産させることである。むろん、直接手を下すわけにはいかないが、呪詛という手段があるのだ。従って、ここは糞尿ではなく、月のものを撒いたと考えるべきだ。「あやしきわざ」は「妖しき業」である。汚れるのが「御送り迎への人」とあって、更衣の裾となっていない点が気になるが、更衣が直接穢れれば、呪詛が帝にまで及びかねない、それを避けたのだと思う。
参う上りたまふにも あまりうちしきる折々は 打橋渡殿のここかしこの道に あやしきわざをしつつ 御送り迎への人の衣の裾 堪へがたくまさなきこともあり
更衣から帝のもとへ参上なさる場合にも、あまりたび重なる折りには、廊下の掛け橋や渡り廊下のそこここに、汚らわしい仕掛けをしては、送り迎えに立つ女官の裾は、耐えがたく今宵の段取りが台無しになることもしばしばで、