さるところ 然る所 02-106

2021-06-03

ふさわしい所。しかるべき所。この場合は、雨夜の品定めの論点である、生涯の伴侶にふさわしい相手。「さる方のよすがに思ひてもありぬべきに/02-075」とあった。前後を補って解釈すると、男の浮気性を恨みカッとなって心が離れてしまうのも烏滸がましい限りで、たとえ心がふらふらしていても惚れた当初の愛情を大切に思う男は(誠実なのだから)、生涯のより所に思ってもみるべきなのに、そんなたじろぎから縁は絶えてしまうのは必定だ。これをもってくると、女に浮気癖があるからと言って、当初の愛情を持ち合わせているなら、誠実な証拠なのだから、生涯の伴侶に相応しいと思うべきだ、という論理になるはずであるが、左馬頭の結論は正反対である。理由は明記されていないが、前言とこの場面が違う点をいくつか列挙しておく。
一、浮気性にも限度があり、許されるものとそうでない場合がある。
一、浮気現場を見てしまっては話は別である。
一、女が同じことをするのは許せない。


ただ時々うち語らふ宮仕へ人などのあくまでさればみ好きたるは さても見る限りはをかしくもありぬべし 時々にても さる所にて忘れぬよすがと思ひたまへむには 頼もしげなくさし過ぐいたりと心おかれて その夜のことにことつけてこそ まかり絶えにしか

単に時々ちょっかいを出す宮仕えの女房などが、どこまでも物馴れた調子で男好きなのは、そのように付き合う限りには気をそそられするものですが、時々であっても、しっかりとした通いどころとして忘れることのない連れ合いと思ってみますには、頼もしい感じはなく好きがましいにもほどがあるとつい気持ちが離れてしまい、その夜のことにかこつけて通うのをぷっつりやめてしましました。

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