かげもよし 蔭もよし 02-105
催馬楽の曲「飛鳥井」の一節「飛鳥井に 宿りはすべし や おけ 蔭もよし…」。ここに泊まれたらいいなとの含意。これで嫉妬しないのだから、左馬頭はもともと嫉妬することがないのかもしれない。自分に嫉妬心がないから指を喰う女の嫉妬心も理解できなかったのかも知れない。
懐なりける笛取り出でて吹き鳴らし 蔭もよしなどつづしり謡ふほどに よく鳴る和琴を 調べととのへたりける うるはしく掻き合はせたりしほど けしうはあらずかし
男は懐に入れておいた笛を取り出して吹き鳴らし「月影もよし」と、宿決めの歌を笛の合間合間に少しずつ歌ううちに、調べよき和琴をあらかじめ調子をあわせておいたと見え、男に合わせて合奏したその様は悪いものではありませんでした。