たはぶれにくくなむおぼえはべりし 戯れにくくなむおぼえはべりし たはぶれにくくなむおぼえはべりし たはぶる たわぶる 戯る 02-100
冗談を言いにくしとの注釈があるが、冗談を言ったという話はここにない。ここは、本気で別れるつもりは毛頭無いのに、嫉妬心を治してやろう(「懲らさむの心」)とへたに芝居をうったことが「戯れ」であり、それを反省しているのである。なおまた、「ありぬやと心見がてらあひ見ねば戯れにくきまでぞ恋しき(古今集 読み人知らず) どのくらいがまんしていられるかを見ようと会わずにいると本当に恋しくてならなくなった」の歌を下に敷き、心底会いたくてならなくなったの意味を兼ねる。「二条院に夜離れ重ねたまふを、女君は、戯れにくくのみ思す(光源氏が二条院での夜の営みを遠ざけておられたので、紫の上は心底さみしく思われるのでした)」(朝顔 @)
さりともえ思ひ離れじと思ひたまへしかば しばし懲らさむの心にて しかあらためむとも言はず いたく綱引きて見せしあひだに いといたく思ひ嘆きて はかなくなりはべりにしかば 戯れにくくなむおぼえはべりし
それでも私のことを思い捨てまいと思いましたので、しばらく懲らしめておこうとの気持ちから「そなたの言うとおり改めよう」とも言わずかたくなに逆らってみているあいだに、心底ひどく苦しみ嘆いてはかなく亡くなってしまいましたので、うっかり芝居をうったりするものではないと身につまされ心底会いたくなったことです。