きざみ 刻み 02-096
時刻。頃合い。
すこしうち笑ひて よろづに見立てなく ものげなきほどを見過ぐして 人数なる世もやと待つ方は いとのどかに思ひなされて 心やましくもあらず つらき心を忍びて 思ひ直らむ折を見つけむと 年月を重ねむあいな頼みは いと苦しくなむあるべければ かたみに背きぬべききざみになむある とねたげに言ふに
女は薄笑いをうかべて「何事につけ見栄えせずぱっとしない間を見過ごして人並みに出世する時もあろうかと待つ分には、たいそう悠長にかまえられて心苦しくもありませんでした。辛気な思いをじっとこらえて浮気の性の思い直る時がくるのを見届けようと年月を重ねてゆく当てどないそら頼みは、ひどく苦しいものでしょうから、もうお互い別れ別れになる汐時でしょう」といまいましげに言うので、