父の大納言は亡くな 桐壺01章06
〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法
分岐その二 01006
「父の大納言は亡くなりて 母北の方なむいにしへの人のよしあるにて…」
父に関する叙述はあっさり消えるが、母に対しては延々とつづく。長い対表現による分岐の開始。読みの心構えは、「亡くなりて」とあるが、その結果どうだというのか、それを探りながら読み進めることになる。「とりたててはかばかしき後見しなければ 事ある時はなほ拠り所なく心細げなり」(娘には立派な後見がなくて心細かった)とあり、その前、母はがんばったけれどの部分が分岐となる。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:父の大納言/母北の方(桐壺更衣の母)/御方がた/後見/桐壺更衣
分岐型:A→(B→C+D→)E→F:A→E→F、B→C+D→E
《父の大納言は亡くなりて》A
父の大納言はお亡くなりの中、
《母北の方なむ・いにしへの人のよしあるにて》B・C
母は家柄の古い教養豊かなお方で、
《親うち具しさしあたりて世のおぼえはなやかなる御方がたにもいたう劣らず なにごとの儀式をももてなしたまひけれど》 D
二親そろった当節評判で勢い盛な女御方にもさほど見劣りすることなく、宮中の諸行事をもまかなっておいででしたが、
《とりたててはかばかしき後見しなければ》E
娘には取り立てて力のある後ろ盾はなかったので、
《事ある時はなほ拠り所なく心細げなり》F
人生の大事が訪れた時にはやはり頼みとするあてはなく心細い様子でした。
- 〈直列型〉→:修飾 #:倒置
- 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
- 〈中断型〉//:挿入 |:文終止・中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B
- 〈分配型〉A→B*A→C
A→B:AはBに係る
Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
※直列型は、全型共通のため単独使用に限った