上達部上人などもあ 桐壺01章05

2021-04-30

〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法

分岐その一 01005

古典を読んでいると、話の筋が突然追えなくなることがある。しばらく読み進めば、文脈が元に復するのでなんだと落ち着くものだが、当座は冷や汗ものだ。なぜこのようなことが生じるのか、理由を考えておくと、少しは冷静に立ち回れる、かもしれない。
一、長い並列や対句がある場合
二、中止法で文意が分断され、話題が転じられる場合
三、長い修飾語がつづく場合
四、文中に挿入がある場合(文頭や文尾の挿入は文脈を追いやすい)
五、会話や心中語がはさみこまれる場合
など、これらの組み合わせも多い。

耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉

語りの対象:上達部上人桐壺更衣異国の歴史世間

分岐型・中断型:A→(B|+C→)D→E→F→G:A→D+E→F→G、B|+C→D→E

上達部上人などもあいなく目を側めつつ》A
上達部や殿上人なども対処に困り目をそむける一方で、


いとまばゆき人の御おぼえなり・唐土にもかかる事の起こりにこそ世も乱れ悪しかりけれ》B・C
まったく見も当てられないご寵愛ぶりですな。唐土でもこうしたことが原因となって、世も乱れ災厄を招くものですと、


とやうやう天の下にも あぢきなう人のもてなやみぐさになりて・楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに》D・E
ようやく広く世間でも、道を外れた扱いに窮する悩みの種となり、果ては楊貴妃の名前までが持ち出されかねない事態へと進むなか、


いとはしたなきこと多かれど》F
更衣はひどくいたたまれない思いを幾度となく味わうものの、


かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて まじらひたまふ》G
かたじけない帝の比類のなき大御心を頼みに、宮仕えをお続けになるのでした。

  • 〈直列型〉:修飾 :倒置 
  • 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
  • 〈中断型〉//:挿入 :文終止・中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B
  • 〈分配型〉A→B*A→C

 A→B:AはBに係る
 Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む
 ※直列型は、全型共通のため単独使用に限った

Posted by 管理者